三学経営科学研究所-高橋基人主宰-中国ビジネス指南
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<書評>アフリカを食い荒らす中国~セルジュ・ミッシェル他著 河出書房新社

筆者が銀行員だった時代、当時の通産省の委託調査で長期にわたりサハラ以南の西アフリカ諸国や、南部アフリカ諸国の現地調査を行う機会に恵まれた。1980年代前半のことである。
訪問した国は、セネガル、ベナン、コートジボワール、カメルーン、ガボン、コンゴブラザビル、ザイール、そして南アフリカ、ジンバブエだった。
これらの国に対し日本政府が設ける貿易保険の与信限度額の参考にするためのカントリーリスクを調査するのが目的だった。
当時の調査のポイントのひとつが、これらの国々に対する旧宗主国の経済、政治面でのコミットメントの度合いだった。
現地調査は一カ国あたり数週間かけたが、なによりも困ったのは食事だった。
その中で、現地にある中華料理屋には本当にお世話になった。どんなところにも必ず中華料理屋はあった。ガボンの首都リブルビルでは、ひどい下痢に悩まされたが、車を飛ばしで駆け込んだ中華料理屋で広東風焼き飯と酸辛湯で、なんとかことなきを得た。ジンバブエの首都ハラレでは、独立直後、日々外貨管理が厳しくなるのを反映するかのように、日々メニューの数が減っていくのに愕然とした記憶がある。
ほぼ30年前のことだ。
当時、アフリカにおいて中国といえば、あくまで「点景」であり、日本人駐在員や出張者にとっては米の飯が食える「憩いの場」であった。
さて、この本を読み、アフリカを語るとき、その観点は旧宗主国との関係ではなく、中国との関係が主軸になるということを強く思い知らされた。
もはやアフリカにおいて中国は「点景」などではなく、旧宗主国をもしのぐ圧倒的な存在となりつつあるようだ。
アフリカにすむ中国人の数は少なく見積もって50万人、多くて75万人だという。しかも、この数は増加の一途をたどっている。
アフリカに流入する中国人は大きく分けて3種類ある。第一が外交官および国有企業の幹部、第二に中国からの借款で進められた建設プロジェクトを請け負う国有企業の従業員。第三が、個人の起業家だ。
中国のアフリカ進出は、援助の形をとらず、借款の形をとるのが最も一般的だという。ある国のプロジェクトに対し中国輸出入銀行が長期のファイナンスを提供する。プロジェクトは入札制だが、価格の安い中国企業がほぼ100%の確立で落札する。
そして落札した中国企業は、プロジェクトの実施に必要なものを従業員まで含め、丸ごと一式現地に持ち込む。
「ひも付き援助」というのは、日本政府もやっていたが、これほどまでにあからさまなものではなかっただろう。
なんのことはない、中国政府のお金で中国企業がアフリカでプロジェクトをやっているわけだ。お金が現地に落ちることはおとんどないという。
もちろん、プロジェクトを落札するため、裏金やコミッションが動く。
さらに、中国政府は、こうした借款の供与にあたって、政府の腐敗や人権を問題にすることはない。「これはビジネス」と割り切っているわけだ。
フランスやイギリスといった旧宗主国は、援助疲れもあるのかどうか、口は出すがカネは出さないというスタンスのようだ。
さて、中国の活発なアフリカ進出の狙いはなにか。
まず、国連の一国一票制度。アフリカには53の国がある。どんな国であっても一票は一票だ。台湾問題あるいは環境保護規制など、中国はこの一国一票制度を使い、時刻に有利な票固めを行うことができる。
次に、資源の確保である。ガボンのポワントノワールの沖合赤道ギニア、ナイジェリアなど西アフリカは石油資源の宝庫だ。そして中国がすでにスーダンで石油開発を行っていることはよく知られている。さらに、アフリカの森林資源。カメルーン、コンゴの木材資源だ。そして南部アフリカの気象鉱物資源の安定確保である。
最後が輸出市場としてのアフリカだ。南アフリカでは、雨後のタケノコのように中国人経営のスーパーが設立され、広東省などからコンテナで安価な衣料品、靴、家電製品が輸出されているという。
欧米諸国に売れなくなった「安かろう、悪かろう」商品を大量に持ち込んでいるわけだ。おもに個人の起業家がこうした事業を行っている。
一昨年のリーマンショック以降中国沿岸部の輸出加工業は深刻な打撃をこうむっているが、生き残り策として、アフリカ市場の開拓を積極的に行っているわけだ。
官民あげてのアフリカ市場に対する中国の取り組みは、このようにすさまじいものがある。その一方で、足元に深刻な危うさがある。
ひとつは、十分に民族資本が発達していない(現地の有力企業のほとんどが旧宗主国の資本だ)なか、中国企業がどんどん進出している。しかも、仕事のほとんどは中国からきた中国人が行い、現地の人々の仕事は、末端のものばかりだ。両者の間にコミュニケーションはほとんどない。
つぎに、その一方で、現地政府と中国との関係は良好だ。しかし、現地で政権交代が起こったときはどうなるのか、その構えがない。
最後に、上記のことも含め、中国政府に「カントリーリスク」に対する複眼的な見方がないうえ、50万人を超えるアフリカの中国人に対する保護の体制もほとんどできていないことだ。
本書の原題は「La Chinafrique」という。チャイナフリカといった意味。中国化されるアフリカということだろう。
現象面ではそう見えるが、上記の危うさを考えれば、今後の道筋は決して平たんではないだろう。
なお、中国とアフリカとの関係を報告した本は、この他にも「ルポ 資源大国アフリカ~暴力が結ぶ貧困と繁栄」(白戸圭一、東洋経済)がある。
中国のアフリカ進出に関心のある読者は、これも合わせて読まれることをお勧めする。

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